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こうして始まる、始まってしまう

時間で言うなら、数日前の夜半。
場所で言うなら、或る地下鉄の車内。

終電に揺られながら、Zoikhemは待つ人がいる、逢うべき人がいる駅へと向かっていました。

車内は混雑。
酔客で混雑。
気温、湿度に加え、漂う酒精の汚濁で急上昇の不快指数は、其れでなくとも弱いZoikhemの『堪忍袋の緒』を切ろう切ろうと躍起です。

Zoikhemにとっては通過駅でしか無い、或る駅。
閉まろうとするドアに転げ込む様に女性が乗り込んできました。

小柄で痩身。
身に纏うは涼しそうな麻のワンピース。
左腕の薬指には輝く拘束輪。

そんな彼女は、既に『』寸前で、少なくとも『』程度には正体も覚束無くなっている様です。
車内は満員。
誰も席を譲るわけも無く、彼女は『ドアと座席の合間の三角聖域』に凭れ掛かる様に、やがて本当に座りこんで仕舞ました。

彼女が乗り込んで来る迄、其の聖域はZoikhemの領土だったのですが、奪われてしまったのです(汗)。

Zoikhemは酒飲みです。
大好きです。
が、程度を超えた酔漢は好きではありません。
と言うか、はっきりと嫌いです。

で、この場合も「泥酔と言う自己責任の病」を、弱者の御旗の如く振りかざし、周囲の迷惑を省みない彼女に対して、Zoikhemが持った感情は非常にシンプルに不快感でした。
本人に其の気が無いでしょうが、だからと言って其れは免罪符になり得ない、Zoikhemはそう考える偏狭な人間なのです(笑)。

座りこみ、時に立ち上がり、ショルダーバッグを座席に座っている人間の顔に押しつけ、眼鏡を飛ばす。
Zoikhemが申し訳無く感じてしまうほどです、何故か。

Zoikhemは、判り易い怒りと、其れでも多少の心配と、いずれにしろ他人事と言う無関心とを薄く混ぜた不快のカクテルを飲み続けながら、無聊を過ごします。
車内は愈々混み、文庫本を開く隙間すら充分では無かったのです。
勿論、彼女が占有している空間が開放されれば文庫本など数十冊でも開けるのですけども(笑)。

更に何駅か過ぎました。
其の間、駅に着くたびにホームに落ちそうになり、新たに入ってきた乗客に凭れ掛かり、舌打の連鎖を生み出し続けています。

が。

或る駅で乗り込んできた男性。
長髪で髭面。
一目見て『フリーランス』の人間であると判断できる外見です。
年の頃は30代後半ほど(Zoikhem見立て)。
瞳は濁っていなく、高い知性の輝きも見て取れます(矢張りZoikhem見立て)。

新たな乗客は、新たな止り木に過ぎません、彼女にとって。
止り木にされた乗客は大人の無視を決め込んだり、気高くも無力な抵抗を試みたり。
…今までの展開では。

ただ、今度の止り木は異なる対応を見せたのです。
凭れ掛かってきた彼女を抱き寄せ腰と首に手を回す』と言う対応を。

間違いなく顔見知りなどではありません。
彼の表情の一瞬の変転と、彼女の耳もとに囁きかける言葉からも、其れは明らかです。
漏れ聴こえ来る彼の声は、彼女の降りる駅を確認し、彼女の体調などを尋ねていましたし。

更に何駅かの区間を列車は駆け抜けます。

最初は、無抵抗に、と言うか無反応に彼の胸に顔を埋めていた彼女。

が、やがて彼女の手も彼の身体に回されました、堅く、緩く、時に何をか訴えかける様に。
其れは、彼女が彼に答えた自分が乗り換えるべき駅を通過した頃から、の事。

彼女の左手には、相変わらず鈍く輝く金属輪。

其の拘束の魔力は酒精と共に夜に滲んでしまったのでしょう。


こうして始まる。
始まってしまう。


そんな夜もあるのでしょう。

いや、実際彼らがどんな夜を過ごし、どんな朝を迎えたかは知りませんけどもね(汗)。
そうでなくとも、Zoikhemの方が先に列車を降りてしまいましたし。

しかし、最後の衝撃は、Zoikhemが列車を降りる際に訪れたのでした。

酔いに任せて、彼の腕に身を委ねる彼女のワンピースは在り得ない位置にまで『ずり上がっていた』のです。
遥か、胸の辺りまで(汗)。

勿論、下は丸見えです
痩せた太股の筋張った付け根。
総レースで殆どシースルーのパンツ越しに、暗い陰りまでも

彼も腕に触れる感触で、其れが生身である事くらいは判っているはずですが、さて(笑)。

途中まで口いっぱいに広がっていた『不快のカクテル』は、彼の登場以降『興味深い出し物を楽しむ為の美酒』に変わっていました。

其れは、Zoikhemの胸にも多少のトキメキを残したのでありますよ。


多少の脚色や記憶違いはあるでしょうが、基本的に実話です。


駆ける!@真昼の植物園
この直後警備員に見つかって、脱兎の如く戻ってきたChoyeです。
で、主従して遁走(汗)。
危機一髪とはこの事です。

連写シリーズで、その内に貼ります、会員エリアに(笑)。

皆様へのレスは後ほど、必ず。

仕舞
Zoikhem

Trackbacks

Comments

牛蒡 | 2006/Jul/30 23:37

最初は喧嘩でもしたのかな?と思いました

特異な状況下におけるナンパ?
一言で言えば「ばかやろー」と髭親父に言いたいです
経験の在る方が見れば、食べたもの勝ちですかね

choyeさん、相変わらず良いシリですね

Zoikhem | 2006/Jul/30 23:53

>牛蒡様
喧嘩?
Zoikhemがですか?
Zoikhemと対等に喧嘩できる(喧嘩であれば対等なモノでしょうから)人間、ましてやペットは稀有ですねぇ。
Choyeは稀有な例外ですが、時として(汗)。

『介抱食い』は一つの特殊技能ですからねぇ。

この写真でみると、多少垂れて来ている様ではあります、尻(汗)。

ねこかぶり | 2006/Jul/31 00:38

>Zoikhemの方が先に列車を降りてしまいましたし。
降りちゃうんですか(笑)。

>酔いに任せて、彼の腕に身を委ねる彼女のワンピースは在り得ない位置にまで『ずり上がっていた』のです。
「酔いに任せて」上がる物なのでしょうか。
イランの宗教警察に意見を聞きたいですね。

今度から、心を入れ替えて、麗しい乙女が倒れていたら、介抱するようにします(笑)。

Zoikhem | 2006/Jul/31 00:47

>ねこかぶり様
「降りちゃうんですか(笑)」
だって、ほら、女性が待っていますし(汗)。

「「酔いに任せて」上がる物なのでしょうか」
酩酊の最中、彼の腕の中で身体を捩るたびに、少しずつずり上がって行ったみたいです。

其れ自体は『事故』であると思いますが(周囲も困った顔をして其の即席」カップルを見てましたし)、彼が気がついていないとは俄かに信じられないですよねぇ(笑)。

ヨシ爺 | 2006/Jul/31 05:05

酒が飲めない(抗体が少ないため)爺には考え付かないシチュエイションですね爺はたとえ裸の女性でも酔っ払いには近づけないので(見ないとは申しませんが)飲んでいるうちは付き合えるのですが飲まれ始めたら車に乗せて(ノ・。)/~~~" 
返品してしまいます 食べたくても何の反応も期待できないのではおいしくもなんともないですからね

本日の写真は何か映画のワンシーンを見ているようですね
周囲の色が単調で色味が明るい場所がchoyeさんに合っているのかな 

Zoikhem | 2006/Jul/31 17:57

>ヨシ爺様
Zoikhemも斯様な『お持ち帰り』とは無縁ですねぇ(汗)。
良し悪しを判断出来る様な身分ではないですが、ただただ、面白くないな、と。

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