2006/May/29 Mon | Zoikhemの必修
『嫌われ松子の一生』
は邦画版「Hedwig & The Angryinch」だと、Zoikhemに思えました。
共に、
不器用なまで愛を求める『爪弾き者』女性の物語で、
作品中、音楽が不可欠の要素として機能し(というか、事実上ミュージカル映画ですよね、両者とも)、
ポップで独自性の高い色彩感覚に彩られた、
さらに最後はハッピーエンドである、
と多くの点で、Zoikhemは両作品に近似の感動を覚えるのです。
実際に両作品を鑑賞された方の中には、「最後はハッピーエンド」には賛同し得ない向きも多かろうとも思います。
なるほど、確かに両者とも、基本的には悲劇的な転落人生を描いていますし、ラストも一見して悲惨ではあります。
其の悲劇性は其れだけで、充分に強力でもあるのです、涙腺に猛攻をかけるほどに。
ですから、悲しい終わりであると感じられる方のご意見は退けません。
それはそれで、正しい説得力を有する感想であると思います。
ただ、其れでもなお、Zoikhemには両作品共『ハッピーエンド』に思えるのです。
作品の趣旨に併せて、主人公が救われたか否かでいうと、如何ともし難く『肯定』しか出来無いZoikhemなのです。
こういった感想を語りながら、且つネタバレしないでおくというのは非常に難しいです(涙)。
特に松子は公開したばかりですし、初めて観る方の感動を損ねる事は、Zoikhemとして本意では御座いません。
ヘドウィグならもう旧作ですし、多少は語って良いかな(汗)?
良いですよね(笑)?
愛を求めるとは、取りも直さず『自己を肯定したい』という根源的な要求の発露である様に思えるZoikhemです。
産まれ出でた自己を、如何にかして認めたい、認められたい、誰かに必要とされたい、自分で自分を好きになりたい。
形は違えど、それらは愛と呼ばれる『在り様』に思えます。
そして、ヘドウィグは、最後に歪な自己を自ら愛する事が出来た。
Zoikhemの意見としてはこうなります。
カウンターパーツが仮に居なくとも、どれだけ自己の形が真円から遠く歪で脆くとも、それはそれで完全なのだと、自己を肯定できたのだと、Zoikhemには思えるのです。
それは『孤独と呼ぶ種類の一人』では無いのです、Zoikhemの認識では。
ヘドウィグの終わり方を如何観るか、これは結構大きなテーマかもしれないですね(汗)。
まぁ、Zoikhemにとっては一つのハッピーエンドであると、そういう事です。
で松子ですが、自己肯定に至る手段、そして其の終わり方(結果という意味では無いですよ)はヘドウィグと全く異なります。
これは、予告編などで言ってますからネタバレでは無いでしょうけど、ぶっちゃけ彼女の死から始まりますし物語は。
ただ、矢張りこれも一つの愛の物語であって、愛を求める不器用な魂の『救い』の物語であると思うのです。
そして、彼女は救われている、とZoikhemは観ました。
故にハッピーエンド。
そういう事です。
Zoikhemは映画の最後で、顔面神経痛の発作かと思われるほど、顔の表皮をぴくぴくさせながら、涙を垂れ流していましたが、それは悲しみ故ではありません(まぁ、それも少し含まれていますけども(笑))。
一つの『救われ方』を啓示されたが故に、Zoikhemの涙は止まらなかったのです。
これくらいならネタバレして無いですよね、ね(汗)?
それにしても『下妻物語』も傑作でしたが、中島監督恐るべしデス。
卓越した映像感覚と美意識を持ちながら、其処に留まっていない。
物語りを語る術も、非常に高いレベルで結実されています。
ギャグも滑って無いですし(笑)。
反例としては、宇多田ヒカルの旦那様であられる「キャシャーン」監督氏などがいらっしゃいます(汗)。
PVなどを鑑賞すると、非常に勝れた才能であると感じますが、物語る力量に関しては…。
まぁ、あくまでZoikhemの意見です(笑)。
おぉ、今夜『下妻物語』は地上波でやっているではないですか!!
お時間があって、未見の方は是非、です。
こんなアダルトBlog観てる場合では無いですよ(笑)。
それにしても、我ながら思います。
Zoikhemは、斯様な『社会のアウトサイダーが救いを求める物語』に弱いなぁ、と。
バッドエンド以外の何物でも無い、AmericanNewCinemaの類も嫌いではありませんから(笑)。
And all the strange rock and rollers
You know you're doing all right
All the misfits and the loosers
Yeah,you know you're rock and rollers
Spinning to your rock and roll
と、misfitでlooserなZoikhemは涙に咽ぶわけです(涙)。
追記。
Zoikhemは「嫌われ松子の一生」の原作は読んでおりません。
故に、上記の感想も全て映像作品「嫌われ松子の一生」に因るものです。
原作はまた別のお話、という事でご理解ください(汗)。
タイトルは『悪魔』だったかな?
記憶違いであるかもしれません(汗)。
こういう面白写真も其の内に公開させて頂きます。
仕舞
Zoikhem
Comments
牛蒡 | 2006/May/29 21:41
下妻も松子も未見ですが、思い出しましたよ
『傷だらけの天使』。
風邪をこじらせて、肺炎に
市販の薬しか入手できず、死んでしまい
ドラム缶に亡骸を入れ、リヤカーで夢の島へ。
見たのが10代でしたのでキツかったです。
それよりもっと厳しいのが『明日の記憶』です
ネタバレするので、あまり言えませんが
『真綿で絞める』とはこういう事かと思いました。
しかし、及川ミッチー王子の演技には驚きました。
ウエンリーさん、FFSが出ましたね。
前レス関係ですが
昔、アンパンとメープルシロップが一時、食べれませんでした
砂糖カエデと悪の葉っぱは似ているし
たしか種類違いの芥子の実がパンの上に・・。
ha | 2006/May/29 22:21
嫌われ松子、観たいんですよ。今度行かなきゃ。
Zoikhem | 2006/May/29 22:51
>牛蒡様
『明日の記憶』は観なくてなりませんねぇ。
謙さんですし。
ミッチーですし。
と言うか、最近すっかり役者ですな王子様。
Zoikhem | 2006/May/29 22:52
>ha様
色々な意味で、今の日本を代表する映画ですよ。
万人にお勧めできる『傑作』だとは思いませんけども。
デートムービーには向かないですしねぇ(汗)。
ウェンリー | 2006/May/29 23:03
私も下妻も松子も見ていません。が、
choyeさんの好きなGANDAMにも悲劇的なラストの作品が有るの
を思い出しました。
最初のOVAで「0080ポケットの中の戦争」中立コロニーサイド6
に住む男の子が、新型モビルスーツRX-78-NT-1アレックスの探査と破壊のために潜入したジオン兵と知り合い。
男の子を監視しているときに男の子の家の隣の女性に住む女性
とプラトニックラブ。
ジオン特殊部隊に因るアレックスの破壊に失敗、焦るジオンはコロニーごと核攻撃の準備。ジオン兵は核攻撃阻止のために
ラストは、かなり悲劇的でした。
牛蒡さん、こんばんわ。Zoikhemさんがフィルモアなんて書き込むから、つい続きに「ノイエ・シルチス」のMHとファティマの名前を。
私としては5巻の『破裂の人形』のデザインとギミックが好きなのですが。
Toris | 2006/May/30 05:10
「Hedwig & The Angryinch」
以前紹介して戴いた日よりTorisのマスターピースの一つと成って居ります。聞かない日は御座いません。有難う御座いました。(謎)
『嫌われ松子の一生』
まだ未見で御座いますが『下妻物語』の中島監督という事なので是非観なくてはと思っていたところで御座います。
話が前後してしまいますが
>カウンターパーツが仮に居なくとも、どれだけ自己の形が真円から遠く歪で脆くとも、それはそれで完全なのだと、自己を肯定できたのだと、Zoikhemには思えるのです。
嫌われ松子のTVスポットの台詞に
「人間の価値って、人に何をして貰ったかじゃなく…
…人に何をしてあげたか、ってことだよね。」と在りました。
ラストシーンのヘドウィグはもはや『個としての人』の完全体、
それは只与えるだけの存在、無償の愛の行使者、
むしろ人より神とかその様なものに近い存在に感じました。
遵いましてTorisもハッピーエンド説で御座います。
So hold on each other
You got to hold on tonight
Lift up your hands
Lift up your hands
るかるか | 2006/May/30 18:47
ご無沙汰してます。ギャラリー拝見させていただきました。
思わず「歴史」を感じてしまったるかるかです。
「下妻」も「松子」も未見です。それどこるか「ヘドウィグ」すら未見ですが、American new cunemaといって思い起こされるのは「Easy rider」ですかね。
あれにあこがれてバイク乗りになりました(撃たれるけど・・・泣)。
ウェンリーさん、牛蒡さん、そしてZoikhem様。
ここでFFSネタが拝見できるとは思っていませんでした。お仲間ですね。
何気にレーダー前皇帝って、偉大だと思いません?
でも、20年で12巻。
待ちくたびれますよねぇ〜・・・(溜息)。
vignoble | 2006/May/30 19:46
映画『嫌われ松子の一生』、評論やあらすじを読んだのですが・・・自分の人生とオーバーラップするところがあったりして、この先を暗示させるような・・・いずれにせよ、畳の上では死ねないことも想定内の勤務&生活(汗)。
自分とは何なのか、愛とは、救いとは・・・人それぞれに答えは違うかも知れないけれど、自分自身が得心できる答え探しの旅路は続きます。
もし機会があれば、映画「幻の湖」もご覧下さい。
Zoikhem | 2006/May/31 08:53
>ウェンリー様
勿論存じておりますよ、「ポケットの中の戦争」。
ただ、以前も書かせて頂きましたが
「あらすじ的なネタバレ」
はなるべくお控え頂いたほうが、これから観る方々も楽しめるとは思いますです(汗)。
ご考慮頂ければ有難く。
Zoikhem | 2006/May/31 09:00
>Toris様
実に鋭いご指摘です。
本当に鋭い。
今回の松子にも通じる人間観察でもあると、推察する次第です。
是非御覧ください。
「それは只与えるだけの存在、無償の愛の行使者、
むしろ人より神とかその様なものに近い存在に感じました。」
ちょっと吃驚するくらい、今回の松子のテーマに至近です。
Zoikhemは今回、
『人は死んでなお、出合った事の無い他人の心の中でさえ、追憶の果てにさえ、救われる』
『他人の記憶の中で、まきもどって、編集され、彩色を施された自己も自己の一部である』
という、究極的な救いをいただきました。
勝手な解釈ではあるかと思いますけども(汗)。
Zoikhemという人間は、Zoikhemの中にだけあるのでは無く、ノートの切れ端や、写真の中、そして勿論、Choyeの心の中にも其の構成要素を散りばめているのだなぁ…。
と、人と交わり、記憶を共有する素晴らしさを改めて確認したZoikhemです。
Zoikhem | 2006/May/31 09:02
>るかるか様
おぉ、こちらこそご無沙汰しております。
「Easy rider」も衝撃的な映画でしたねぇ。
刹那的な衝動と、方向を持たない情念のトロミ…。
最後も美しいほどにあっけないですし。
Zoikhemも大好きです。
レーダー前皇帝が偉大だと思うにも、同意です(笑)。
人間としての権力者の限界を極めておられますよねぇ。
Zoikhem | 2006/May/31 09:05
>vignoble様
どんな人生もハッピーエンド、という事です。
勿論、vignoble様が畳の上で死ねなくても(汗)。
で「幻の湖」!
関根恵子が良いんですよねぇ(笑)。
世紀の奇作にして必見の映像作品かと。
DVDを500円くらいで入手したZoikhemです(笑)。
エルム | 2006/Jun/2 21:45
嫌われ松子の一生、観てきました。あれほどお父さんの愛を求めて、本当は十分愛されていたのにあとからきずくなんて、その後も懸命に生きるもに何かが狂ってしまう、つらすぎて涙が止まりませんでした。人は一人では生きられない、どんな形でも世間と繋がってないとだめなんですね。ぼくは3月に健康診断を受け、精密検査を進められ結果癌でしかも多臓器にわたって犯されてるので手術不能末期ですといわれました。何の自覚症状もなく毎年人間ドックで検査を受けていてこの結果です。この宣告を受け入れるまでつらかったけどでもぼくにはいい仲間がいます。一緒に戦ってくれる妻もいます。そしてZoikhem
さんとChoyeさんのブログを見、画像も見られます。ぼくは十分幸せな一生を送っています^^おふたりに感謝してます。
Zoikhem | 2006/Jun/2 22:03
>エルム様
Zoikhemの言葉は、エルム様に自信を持って届けられるほどに強靭ではありません。
が、おためごかしの上滑りで笑っていられる程にも、Zoikhemの構造は強靭では無い様です。
Zoikhemは思います。
人は、あらゆる形で、方法で、想いで、何時の時代でも、救われうる、と。
Zoikhemは、この映画から、勝手ながらそんな救いを得ました。
松子は、事実上無関係に近い甥っ子の、編集作業である『MEMORY』ですら、救われたのだと、想うのです。
監督の狙いとは違うのかもしれませんが、Zoikhemなりに咀嚼した結果です。
人は、他人の記憶の中ですら、救われ得る、と。
文字にすると陳腐で、怪しくさえありますが(汗)。
Zoikhemは、色々な方の心に少しずつ侵食しているはずですし、また、Zoikhemはエルム様の在り様の一端に含まれました。
広い意味で、人は人と何処ででも繋がり得ます。
あぁ、未整理の言葉の群で、失礼いたしました。
しかもネタバレ気味ですね(汗)。